ひびらし(日々の暮らし)

しがない研究者です。

ADHD傾向のある人向け家事Tips①:基本ルール

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このシリーズでは、ADHD傾向のある人間ができるだけラクに家事をする方法をまとめて行く予定。 今回はその最初の記事であり、考え方の基本となる2つのルールについて書く。 もし「そういうルールには興味がない」「具体的なハックが知りたい」という人はこれ以降の記事を読んで欲しい。

2つの基本ルール

ADHD傾向のある人は、頭の中の容量(ワーキングメモリー*1が小さいという説がある。 これはたとえるなら、他の人より小さい机で作業しているようなものということ。 そのせいで、普通の人にとっては大したことのない作業が非常に大変に感じてしまうらしい。 この辺は確かに実感がある気がする。

これをなんとかするためには、とにかく頭の中の容量を節約する必要がある。 そのために役立つのは、以下の2つのルール。

ルール1. 「例外」を減らす
ルール2. 「手順」を減らす

ルール1. 「例外」を減らす

よく言われることだが、人間は物事を判断することに案外大きなエネルギーを使う。 特にADHD傾向のある人間は、たとえ些細なことであっても、考えて決断することがとにかく苦手。 これは多分、頭の中の容量=ワーキングメモリーが不足しているせいだと考えられる。 頭の容量が限られているがゆえに、日常的な判断の一つ一つが(興味がない場合は特に)大きな負担になってしまうようだ。

例えば、「どう処理していいかわからないゴミ」みたいなものがあったとしよう。 おそらく普通の人は、分別ルール等を調べて、さっさと片付けてしまうのではないだろうか。 あるいは後伸ばしにしてもせいぜい2, 3日でだろう(多分)。 そもそも大体のゴミは5分もあれば片付けてしまえるわけだし。

一方、ADHD傾向のある人間は「どうするべきか事前にわかっていないもの」「少しでも考えないといけないもの」にとにかく弱い。 ちょっと調べたり、考えたりすればわかることであっても、延々と後伸ばしにしてしまう。 実際に読者の中にも、捨て方がわからないゴミを何年も放置したことがある人が結構いるのではないだろうか。 このような問題はゴミ処理に限った話ではなく、家事全般で生じてしまうのが辛いところだ。

こうした状況を避けるために最も基本となるルールは、日々の家事から「例外」を可能な限り排除すること。 ゴミ処理の例で言えば、「どう捨てていいかわからないゴミ」が「例外」にあたる。 他にも「どう掃除していいかわからない場所」や、あるいは「何の気なしにその辺に置いた本」なども「例外」。 このような「例外」を避けるためには、例えば以下のような(サブ)ルールをできるだけ厳密に守ることが有効だ。

  • ゴミの分別それぞれに対応したゴミ箱を置く  → 何も考えずにゴミ箱に入れられるようにする
  • 掃除する場所とやり方を事前にリストアップしておく  → どこを掃除するか、どうやって掃除するかを考えなくてもいいようにする
  • 物はすべて定位置に置く  → どこに物を置くかを考えなくていいようにする

このようにして可能な限り「例外」を避けることで、何も考えずに機械的に行動に移ることができるようになる。 したがって、「考えを巡らせる」=「ワーキングメモリーを圧迫する」ことなしに家事を行うことができる。

ルール2. 「手順」を減らす

「例外」を減らすことと同様に大事なのは、一つ一つの家事の「手順」や「工程」を減らすこと。 これもおそらくワーキングメモリー不足が原因だと考えられるが、 やはりADHD傾向のある人は手順が一つ増えるごとに非常に大きい負担を感じやすい。 例えば、「容器の蓋を開ける」という些細な手順が一つあるせいでしんどくなってしまって先延ばしにしてしまう、ということがよくある。

そのため、家事をしていく上では「え?こんなところまで?」というぐらいとにかく「手順」や「工程」を切り詰めたい。 例えば以下のような感じ。

  • ホコリが入らない/入っても問題ない容器には蓋をしない
  • 見えないところは整理整頓しない
  • しわにならない服は畳まない

全力でズボラな家事をすることが、快適に過ごすための最重要課題の一つ。

補足

ルール1とルール2はトレードオフの関係になっていることがある。 つまり、「例外」を減らすことで「手順」が増えてしまったり、逆に「手順」を減らすことで「例外」が増えてしまったりする。 こういう場合については、各自ケースバイケースで最適化していくしかない。

ちなみに、以上のルールやこれから記事にしていくTipsは必ずしもADHD傾向のある人にだけ有効というものではないと思う。 むしろワーキングメモリーを節約すること自体は、あらゆる人にとってラクな家事につながるはず。

*1:A.D. Baddeley, G.J. Hitch, R.J. Allen, Working memory and binding in sentence recall, Journal of Memory and Language, Volume 61, Issue 3, 2009, Pages 438-456, ISSN 0749-596X, https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0749596X09000576